第2章 「真の独立国家」はどれだけ存在するのか


2.1 独立国家の条件とは何か

教科書的には、主権を持ち、国境を管理し、外交権と軍事権を有する国は 「独立国家」とされる。 しかし現実には、その条件を満たしてもなお、 独立しているとは言い難い国が大多数である。

真の独立国家とは、 自分の生存を他者に依存せずに維持できる国 を意味する。 資源、食料、エネルギー、軍事、技術、人口、統治意志 — このすべてを自国で調達・統制できる国家は驚くほど少ない。

国際社会に存在する200近い国家の大部分は、 表面上の主権はあっても、 背後に“スポンサー国家”が存在し、 安全保障、経済、外交のいずれかを 他国に依存している。

この意味で世界は、 国家が林立しているように見えて、 その実態は 多層的な従属の階層構造 をしているのである。


2.2 資源と人口を持つ国だけが“自力で生きられる”

生存の基盤は理念ではない。 物質資源と人口 である。

石油、ガス、水、食料、鉱物にアクセスできない国は、 どれだけ豊かでも独立できない。 同様に、人口規模が小さい国は 軍事的・産業的自立が不可能であり、 必ずどこかの勢力圏に取り込まれる。

資源と人口がそろった国だけが、 自前の経済圏と安全保障を形成できる。 だからアメリカ、中国、ロシア、インドは生存できる。 逆に日本、韓国、台湾、EUの多くは 繁栄しているように見えているが依存国家 である。

独立とは制度ではなく、 自力で生きられるかどうか で決まる。


2.3 アメリカ・中国・ロシア・インド・フランス — なぜ彼らは例外なのか

これらの国々は、 歴史や文化ではなく 生存基盤の構造 において例外である。

アメリカは資源と技術を持ち、中国は人口と製造力を持ち、ロシアはエネルギー資源を背景に国家を維持し、インドは人口と将来の巨大市場を抱える。フランスは欧州では稀で、領土と食料生産力を備えた国家である。いずれも十分な国土を持っている。

これらの国家は核を持っているが、核は手段の一つにすぎず、国家の本質は、資源と人口、十分な国土を基盤に自立して生存できるかどうかにある。

彼らは他国が失敗しても自国を保てる。 だからこそ国際舞台で “自分の意思を押し通せる国家” として振る舞える。

この意味で真の独立国家は 驚くほど少ない。 10にも満たない世界の支配層 である。


2.4 日本はなぜ“強いのに従属国家”なのか

日本は高度な技術力、教育水準、経済規模を持ちながら 自立国家になれなかった。 その核心は 生存資源の欠如 にある。

食料、エネルギー、資源の大部分を 輸入に依存し、 核抑止力を米国に委ね、 防衛の根幹を同盟に頼っている。

つまり日本は繁栄したが、 国家としての主権の中枢は外部にある。

この従属構造は 敗戦後の制度だけでなく、 資源に欠けた島国としての地政が作った宿命でもある。

そのため日本は 世界で尊敬されながら、 国際政治では 主体として振る舞うことができない対象 として扱われる。


2.5 「独立」という幻想が国家の判断を狂わせる

ほとんどの国は「主権国家だ」と信じている。 だが実際には、 軍事、資源、外交、安全保障のどれかを 他国の供給や承認に依存している。

それにもかかわらず、自分を独立国家だと思うと、 国家は危機の兆候に鈍感になり、 “守られているから安全” という錯覚に浸る。

日本やEUの多くの国がそうであるように、 自立できないのに自立していると信じる国は、 最も危険な形で無防備になる。

この錯覚を破壊することが、 本書の目的のひとつである。 世界は対等な国家が対話する場ではなく、 生存力の階層が支配する戦場である。