3.1 経済と権威のゆがみが内側から国家を蝕む
中国の強さは一見、自明に見える。 巨大市場、製造力、軍拡、国家意志。 しかし、その強さは歪みの上に成り立つ強さである。
長年の成長は、不動産と投資主導の構造に依存してきた。 都市化は富を生んだが、過剰投資と債務の山を残し、 地方政府は借金で開発を支え、 中国全土に成長の幻影を維持するための構造が張り巡らされた。
今、その幻影は崩れている。 不動産バブルの終焉は資産価値と国民の心理を直撃し、 経済の失速は国内の不満と国家の焦りを生む。 しかし、その不満は公開討論や制度によって調整されない。 中国は、成長と支配が一体化した体制であるため、 経済の歪みはそのまま政治の危機となる。
崩壊は激突ではなく、 内部矛盾が沈殿していく形で始まっている。
3.2 習近平の恐怖と国家の神話
習近平の支配を理解する鍵は、 彼の強さではなく彼の恐怖である。
彼は国内統治を 経済や制度ではなく、“神話”に依存してきた。 「民族復興」「党の唯一性」「西側の包囲」 という物語は強力だが、 一度信じられなくなれば体制は支えを失う。
習はそれを恐れている。 だから統制を強め、批判を消し、内敵を処罰する。 その姿は自信の産物ではなく、 物語を失うことへの恐怖の表れである。
彼の統治は安定ではなく、 恐怖の管理であるということが、 中国の将来を読む上で最大の視点になる。
3.3 台湾は「統一の夢」か「崩壊の引き金」か
台湾は中国にとって外部領土ではない。 支配の物語の証明である。
つまり台湾統一は、 地図の問題ではなく 習近平の正統性の核心なのである。
しかし、統一とは 軍事的勝利だけで終わらない。 占領後の統治、経済の負担、国際制裁、 米日との衝突、 そして国内の混乱。
台湾は夢であると同時に、 中国が崩壊しうる最も危険な出口でもある。
だから習は台湾を欲するが、 同時に台湾を恐れている。 このジレンマが、 今後の中国外交の全てを規定するだろう。
3.4 中国はどこで誤算を起こすのか
国家は成功の中で誤算を犯す。 中国も例外ではない。
最大の誤算の可能性は、 国内の安定を過信して 外部に解決策を求めるときである。
経済停滞や社会不安を ナショナリズムで乗り越えようとし、 台湾や南シナ海に賭けた瞬間、 その賭けが体制そのものの崩壊条件になる。
中国の脆さは外部の敵ではなく、 内部の矛盾が暴発する形で露呈するだろう。 その時、
習近平の“恐怖政治”は 国家を守る仕組みではなく、 国家を自滅させる仕組みとして働く。
これが中国の未来を読む上での核心である。 権威は外敵ではなく、 自らの恐怖によって滅びる。