4.1 プーチンは何を恐れ、何を求めるのか
ロシアを理解することは、 プーチンを理解することとほぼ同じ意味を持つ。
プーチンの恐怖は、 ロシアの崩壊という歴史的トラウマに根ざしている。 彼はソ連の崩壊を、 国の失敗であり、自分の屈辱として体験した世代である。 だから彼の指導理念は、 ロシア帝国の再構築、 その威信の回復、 失われた領土と精神の奪還である。
しかしその回復は、 安全保障だけではなく彼自身の正統性の基盤でもある。 プーチンはロシアの再起を掲げることで、 自らを国家と同一化し、 崇拝・恐怖・求心力の中心を作った。
その結果、 ロシアは対外拡張と核恫喝を 体制維持の手段とする国家へと変質した。
4.2 核の影と西側の譲歩の歴史
プーチンの最大の武器は核そのものではなく、 核を使うかもしれないという恐怖の影である。
ウクライナ戦争でも、 ロシアが核の可能性を示唆するたびに、 西側は慎重に距離を取り、 武器供与を段階的・限定的に行ってきた。
つまり、核は使われなくても効果があり、 恐怖を利用した政治が成立する。
しかし、この構造には重大な限界がある。 恫喝が続けば、 西側は免疫を獲得し、 ロシアの脅しが効きにくくなる。 さらに、 核をちらつかせるたびに、 ロシアは世界の信頼・経済・軍事パートナーを失う。
核の影は 短期的には譲歩を引き出し、 長期的にはロシア自身を孤立させる。
4.3 ロシアが負ける条件とプーチン後のロシア
ロシアが敗北するのは、 軍が前線で負けた時ではない。 ロシア国家が内部から崩れる時である。
敗北の兆候はすでに存在する。 人口構造の崩壊、 技術の停滞、 制裁による脱工業化、 軍の消耗、 地方と中心の軋轢、 そしてプーチンに疲れ始めたエリート層。
プーチン後のロシアは、 強権者が続く可能性も、 分裂する可能性もある。 だが確実に言えるのは、 ロシアはもはや帝国として戻れないということだ。
ロシアは軍事力ではなく、 資源・外交・地域秩序の一プレイヤーとして 立ち位置を再定義せざるを得ない。
4.4 ロシアは誰に従属していくのか
プーチンの野望とは逆に、 ロシアの未来は従属の方向に傾いている。 その最大の候補は中国だ。
中国は市場と技術と調達力を提供し、 ロシアは資源と軍事経験を提供する。 しかしこの関係は対等ではない。 人口・経済・技術・外交の全てで 中国は圧倒的に優位である。
ロシアが弱るほど、 中国はロシアを取引可能な資産として扱う。 その未来は帝国ではなく、 資源衛星国家に近い。
プーチンが目指した“帝国再建”は、 皮肉にも、 国家の長期的従属を加速させた可能性がある。