第6章 日本 — 地政学の十字路に立つ国家


6.1 台湾有事に引き込まれる構造

日本は戦争を望んでいない。 だが世界の構造が、日本を戦争に近づけている。

南西諸島から台湾までは、 地図で見る以上に短い距離で結ばれている。 中国が台湾を攻めれば、 その戦域は自動的に沖縄・与那国・宮古・石垣を巻き込む。 台湾が落ちれば、 中国軍は太平洋の入り口に達し、 日本の安全保障は根底から揺らぐ。

つまり日本は、 台湾を“他人事”として扱えない地理にある。 日本にとって台湾は、 自由の島である以前に 防衛ラインの一部 なのだ。

日本は戦争したくなくても、 戦争の火は必ず日本の庭先に飛ぶ— それが地政学の現実である。


6.2 日米同盟の本質と限界

日本の最大の防衛装置は、 自衛隊ではなく、日米同盟である。

しかし日米同盟は “米軍が日本を守る契約”ではない。 正確には、 日本が自国の防衛に本気で取り組むことを前提に、 アメリカが可能な支援を行う という構造である。

つまり日本が弱いままでは、 同盟は空洞化する。

戦争の時に重要なのは 条約の文言ではなく、 アメリカの判断者が 「日本は戦う意思がある」と信じるかどうかである。

同盟は盾ではなく、 意志のシグナルで支えられた関係である。 日本がその意志を示せるかどうかが 未来を左右する。


6.3 日本がすべき抑止戦術

抑止は軍備の話だけではない。 相手に計算させ、 攻撃は損だと理解させることだ。

日本が取るべき抑止戦術は、 以下の複合的戦略である。

・ 南西諸島に防衛力を実際に置き、 「ここに触れれば戦闘になる」と示すこと
・ 米軍と自衛隊が  “一体で運用される現実”を作り、 中国に読ませること
・ 経済・技術で  日本を敵に回した時の損失を 中国に理解させること
・ 台湾を守ることが  日本自身の国益であると 国内社会に明確化すること

抑止とは、 相手に「あの国だけは触れたくない」と 内心で思わせる作業である。 その作業をサボれば、 戦争の誘惑が相手を支配する。


6.4 「思想の弱さ」が最大の安全保障リスク

日本の安全保障の最大の問題は、 軍事力よりも思想の弱さにある。

日本社会は 安全保障を必要悪として語り、 現実を直視することを避け、 平和を“願望”として扱ってきた。

しかし戦争を避ける唯一の方法は、 その可能性を世界で最初に理解し、 その計算に基づいて 備えることである。

日本は軍事力ではなく、 現実の認識で敗北しやすい。

覚悟なき平和主義は、 戦争を遠ざけるどころか、 戦争の計算に組み込まれてしまう。

日本が未来を守れるかは、 国民が「平和とは現実への責任である」 と理解できるかにかかっている。