第7章 戦争は起きるのか — 台湾、ウクライナ、中東


7.1 台湾侵攻は現実か幻想か

台湾侵攻は、 習近平の政治的神話に組み込まれている。 だから中国は台湾を諦めない

しかし、中国は 戦争の勝利以上に 統治の失敗を恐れている

台湾侵攻は、 地図の上では軍事作戦に過ぎないが、 実際には中国体制そのものの正統性を問う “政権の死活問題”である。

だから侵攻は現実的だが、 習近平にとって 勝利の定義が複雑になるほど、 その決断は重くなる。

台湾侵攻は必然の可能性ではあっても、 望まれたタイミングで起きるとは限らない

危険なのは、 中国の内部危機が 外部への賭けへ転化される瞬間だ。 その転換点こそ、 台湾有事の本質的引き金になるだろう。


7.2 プーチンはどこで止まるのか

ロシアの戦争は領土の争いではなく、 帝国の回復という物語で動いている。 だから交渉や停戦は 現実的な利害だけでは成立しない。

プーチンは、 ウクライナの完全制圧が不可能でも、 敗北を認めることはできない。 彼にとって敗北は 国家の失敗であり 自身の崩壊を意味するからだ。

だから戦争は 形を変え、長期化し、 凍結・停戦を繰り返す可能性が高い。

戦争の出口は ウクライナが勝つことでなく、 ロシアの内部が変質することで開かれる。 プーチン後のロシアが 現れるまで、 この戦争は本質的に終わらない。


7.3 イランと核、中東の火薬庫

中東は、 地理、宗教、歴史、資源、外部介入が 重なり合う世界最大の矛盾装置だ。

イランは核保有の瀬戸際におり、 その野心は地域秩序を根底から揺るがす。 イスラエルはイランの核を容認できず、 サウジは核の均衡を求め、 アメリカは抑止と取引のジレンマにある。

中東の問題は 局地的事件に見えて、 全世界の安全保障を巻き込む

ここでは 宗教と生存と力の衝突が 抽象ではなく 現実の暴力となって燃え上がる。

中東は、 戦争の終わりを知らない地域ではなく、 “停戦が常に次の戦争の準備である場所”だ。


7.4 多正面戦争の連鎖か、局所的停戦か

世界は 第二次大戦以来初めて、 複数の戦争が同時に連動する 多正面衝突の可能性を孕んでいる。

ウクライナ、台湾、中東の火種は、 それぞれ別の文脈で動いているように見えて、 実際には アメリカ・中国・ロシア・イランの 四つの物語が交差する一点で繋がっている。

そのため、 一つの戦争の結果が 他の戦争の計算を変えてしまう。

ただし、 人類が学んだ唯一の知恵は 「全面戦争は誰も望まない」ということである。

だから世界は、 全面衝突の瀬戸際で 局所的停戦や凍結を繰り返すだろう。

未来は、 終わらない戦争と 終わりそうで終わらない停戦が 同居する世界である。